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アマゾンは緑の砂漠である。
何の役にも立たない不毛の地だ。 開発を!もっと開発を! 木を生やしておくとは、なんとムダなことだ。 森をすべて切り払ってしまえ。 そうすれば、不毛の地は富を生む大地となるだろう。 ・・・と主張する人がブラジルには確かにいる。政界財界で権力を持つ人々の間に。 もちろんここまで極端な主張はさすがに少数派だが(と信じたい)、程度の差はあれ似たような考えを持つ人は少なくない。ブラジルだけでなく世界中に、アマゾンの緑濃い様を眺めながら「手付かずとは、なんとムダな」と、もどかしく歯噛みする人々がいるに違いない。視点が違えば、同じ景色も全く違って見えるものだ。そんな人々にとっては、アマゾンに生きるインヂオ(先住民)など、「わずかな人間たちのために、なぜ社会全体が犠牲を払わなければならないのか。彼らの存在のせいで開発ができない。邪魔だ。迷惑だ」ということになる。深い本音のところでは「同じ人間」とすら見ていない人も多いのではないか。インヂオに対する「わけのわからない未開のやつら」という偏見は、哀しいことに根強く存在する。 NHKスペシャル「ヤノマミ 奥アマゾン 原初の森に生きる」をめぐるエントリーに、あの環境に最も適応した生き方がヤノマミのあの生き方なのだ。その意味でヤノマミは、1万年の間ずっと、いつだって「現代」を生きてきた。 と書いた。 インヂオは、どこにもないどこか、夢とうつつの境もわからないような場所にスピリチュアルな存在として在る人々、いずこからともなくテレビの画面に立ち現れては、「“大切なものを失ってしまった”現代人」に何かを授けてくれるために在る人々、なのではない。この現代に、私たちと同時代に、地続きのこの同じ社会に生きる人々だと私は思っている。その「同時代を生きている」ということをめぐる、ひとつの大切なことを、今日は書いてみたい。前置きがとても長くなってしまったけれど。 アマゾン支流のひとつ、シングー河にいま、発電出力世界第3位という巨大水力発電所(ベロ・モンチ水力発電所)の建設計画が進められている。2014年の稼動開始を目指して、ブラジル政府は遅くとも来月はじめには建設工事の入札を実施したい考えで、それに必要な種々の手続きの最後のひとつ、IBAMAの許可(*注1)が今日明日にも出る ― という段階にある。( 先週、こともあろうにインヂオの利益を代表するはずのFUNAI(*注2)が、インヂオたちの名において建設の承認をIBAMAに提出した。「調査・分析の結果、発電所はインヂオの生活に影響を及ぼさないと評価する」というもので、これはIBAMAの決断に大きな影響を及ぼしかねない。 *注1:IBAMA-Instituto Brasileiro do Meio Ambiente e dos Recursos Naturais Renováveis(ブラジル環境・再生可能天然資源院。環境省の下部組織)がアセスメント結果に基づいて出す開発許可 <ベロ・モンチ水力発電所 Usina Hidrelétrica de Belo Monte> 建設場所 シングー河、パラ州 (地図)> ベロ・モンチ水力発電所 - Google MAP 最大出力 1万1233メガワット(=1123万3000キロワット) ・世界第3位 ・ブラジル第2位(ブラジル単独の発電所としては第1位) 世界1位 - 山峡ダム水力発電所 1,820万kW(中国) 世界2位 - イタイプー発電所 1,400万kW(ブラジル/パラグアイ) ・日本の標準的な原子力発電所の約10基分 ダム湖面積 400平方キロ ・八ツ場ダムの132個分 ・山手線内側の6倍 ・大阪市の1.8倍 ・横浜市とほぼ同じ大きさ 干上がるおそれのある河の部分の長さ せき止めた水はダム湖取水口から約100キロ下流に設置される発電施設まで水路を通して導水される。その取水口~発電施設間が乾季に干上がる可能性あり。100キロとは、 ・淀川の1.5倍の長さ ・多摩川とほぼ同じ長さ 電気の用途 政府は「パラ州内で利用する」と述べるだけで、詳しい用途をまだ発表していない。送電線網の建設は計画されておらず、大都市の電力不足を補うために利用するわけではなさそうだ。アマゾンの地下に眠る豊かな鉱物資源の採掘を見据えた電源開発ではないか、という見方もある。 入植者数予測 9万6000人 【参考】 いまアマゾンでは、シングー流域を生活基盤とするカヤポ民族を中心に200人以上のインヂオが蜂起して、抗議行動を行っている。おととし来日したカヤポ民族長老、ラオーニも、もちろんそこにいる。彼らの抗議理由はこうだ。 ■政府はこれまで一度もインヂオとの話し合いの場を設けていない ■これまでに出された環境アセスメントの結果は、どれも建設ありきのものにすぎず、環境へのダメージがいちじるしく過小評価されている ■インヂオの生活に与える社会環境影響をめぐるアセスメントが全く行われていない ■自然破壊によって流域の天然資源を糧とする先住民の生活基盤が脅かされる ■急激な人口拡大により、インヂオ居住区内に侵入して行われる密漁・密猟がさらに拡大悪化する 彼らは怒りに震えている。 建設推進の責任者、鉱物エネルギー省大臣エジソン・ロバォンは、建設に反対する彼らを揶揄して公の場でこう言い放ったのだ。 「進歩を邪魔だてし我が国を後退させようと足を引っ張る邪悪な勢力が存在する」と。 インヂオたちは、鉱物エネルギー省、環境省、IBAMA、FUNAI、連邦検察庁、それぞれの代表者がシングーまで出向いて話し合いのテーブルに着くことを要求している。 シングー地域を支援対象として長年活動してきたNPO法人「熱帯森林保護団体(RFJ)」代表の南研子さんが、「インヂオたちは命をかける覚悟でいる」と言っていた。 政府が要求に応えなければ、インヂオたちが首都ブラジリアに押し寄せることになるだろう。大きな衝突が起こるかもしれない・・・。 前述のエジソン・ロバォン鉱物エネルギー大臣は、こうも言っている。 「では、化石燃料を燃やす火力発電所をよそに作ればいいというのか。ベロ・モンチは、クリーンで環境にやさしい発電所だ。しかも経済的だ。反対する人間は、コストが高く汚染も出す方を選ぶのか?」 これにどう論理的に反論できるのか・・・。試されている、と感じている。 シングー地域は、アマゾンの中でももはや数少ない、広大な手付かずの森が残る場所。インヂオの存在が森を開発から守ってきた。私は、水力発電所の施設そのものの問題ももちろんだが、それ以上に、この発電所が先兵となって、一帯の開発が一気に広範囲に進むことを危惧している。アマゾンを「緑の砂漠」とみなす価値観が、アマゾンを本当の砂漠に変えてしまうのではないか。この発電所の建設が、ブラジルの舵取りを大きく変える分岐点になってしまうのではないか、と。 その価値観は正しいのだろうか? いま、答えは出ないかもしれない。しかし世の中には、後でもし誤りに気づいたとしても、もうどうしようにも取り返しがつかない種類のことがある。これは、それ、ではないのか? 実はベロ・モンチ水力発電所建設計画は20年前にも持ち上がり、そのときも先住民による大規模な蜂起が起きたのだった。1989年にラオーニがスティングと共にアマゾン保護を訴える世界ツアーを行った、その訴えの中のひとつが、それだった。国際世論の高まりによって世界銀行が融資を取り下げ、計画は頓挫した。それがまた亡霊のようによみがえり、皮肉にも民衆の側に立つはずの初の労働者党政権の元で、いよいよ実現されようとしている・・・。 2014年ワールドカップ開催、2016年オリンピック開催と勢いづくブラジルを眺めながら、とても複雑な思いでならない。 そして鉱物資源の開発となれば、工業国であり、鉱物資源輸入大国である日本の私たちが、直接的にその恩恵をむさぼることになるわけだ。遠い地球の裏側の話ですむわけがない。 建設反対署名にご協力を! RFJが、署名行動を開始しました。ルラ大統領に計画の撤回を求める署名です。 署名用紙はRFJのサイトからダウンロードできます。詳細は、こちらをご覧ください。 ベロモンチ水力発電ダムについての緊急報告 http://www.rainforestjp.com/news2009Belomonte.html ベロモンチ水力発電ダム建設計画撤回のための署名にご協力お願いします http://www.rainforestjp.com/news.html 私も署名用紙作成と資料集めをお手伝いさせてもらいました。(ポルトガル語部分はヘジさん協力) 署名をどうかよろしくお願いいたします。 (追記) 署名集めは終了いたしました。 ご協力下さった皆様、ありがとうございました。 署名運動の報告記事は、こちらをご覧下さい。 署名をルラ大統領に提出
by hyakuishou
| 2009-11-02 06:24
| アマゾン/先住民
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