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市販の腐葉土からセシウム検出、というニュースが立て続けに出ている。「えっ、腐葉土からも?!」と一瞬驚き、すぐに「ああ起こるべくして起きたことだな...」と得心した。放射性物質を含んだ雨はもちろん森にも降り注いだのだから。
今回の原発事故のあと、スーパーの野菜売り場に「安心の中国産」みたいなポップが貼られている写真をネットで見かけて「価値観とは移り変わるものなのね」としみじみしてしまったけれど、いよいよ「安心安全・非有機!」なんてキャッチフレーズがウリになる時代がやって来るのだろうか。 私たちはいわゆる有機農業をやっている。そして有機作物には「安心安全」という惹句が付き物だ。それは普通「消費者にとっての安心安全」という意味なのだろうけれど、私は、「というか生産者や生態系にとっての安心安全なのでは」と思って来たし、「有機農業は、持続可能、循環という価値でこそ語られるべき」と考えて来た。 しかし放射性物質汚染となると、また話は違って来るのだなあ。安心安全の根幹を揺るがすものだし、なにせ物質が循環するからこそ困るのだ。とにかく少なくとも東日本では、有機農業の消費者側から見たイメージは、この先、揺らいで来るのかもしれない。それでそのうち、こんなのがブームになったりして。 「都会のビルの地下の野菜工場で、空調完備、人工灯の下、栄養液で水耕栽培された清浄な無農薬野菜です」 「土や自然界とのコンタクト、安心安全のゼロ!」 「しかもソーラーで自家発電」 「都会でだからこそ実現できる、もぎたて超新鮮直送。フードマイレージは、ほとんどゼロ!」 「これこそが究極のエコ農業だ!」 溜息。 閑話休題。 腐葉土の話なのだった。 放射性物質:栃木産腐葉土7製品自主回収 セシウム検出で (毎日新聞 2011年7月29日) 岩手産腐葉土、カインズが全国166店で販売=同業各社も、店頭撤去 (時事ドットコム 2011/07/28) 記事を読んで、実は別の意味で「えっ?」と思ってしまった。 落ち葉も輸入してるのか! 上の記事から引用すると、「(製造元の)加藤産業によると、5月末までは輸入した落ち葉を原料にしているが、毎年6月ごろから栃木県の落ち葉を使うという。」 下の記事では、「腐葉土には原産国として岩手のほか、タイ、ベトナム、バングラデシュが表示されており、鳥取県は「生産工程によって混合の割合が異なるのではないか」としている。」 だそうだ。 腐葉土の業界事情はどんなかんじなの?と思い調べてみると、こんなページに行き当たった。地元四国の落ち葉で国産腐葉土を作っている、土や堆肥などの園芸資材の製造販売会社のwebサイトである。 私が「金の腐葉土」をお勧めする理由 - 有限会社カネア 腐葉土が一般に市販されるようになったのは、ここ30年ほどだそうだ。その後、ホームセンターの林立と家庭菜園・園芸ブームで需要拡大、生産拡大、低価格競争、国内の落ち葉採取可能地の減少や人手不足、などなどの要因によって、業界では原料の一部を中国や東南アジアから輸入するようになってきたらしい。 なるほど...と、身の回りを見回してみれば、落ち葉を大量に採取できるような山など確かにないよなあ、と思う。あらゆる場所に竹が侵入して酷いヤブになっているし、そうでない山も下草や雑木が密生していて、とても森の中に入れたものではない。(竹やぶなどない東北の青く美しい山々を思い浮かべるたび、それが汚染されたことが悲しく腹立たしい...)。ましてや普通の今の農家では、落ち葉はそもそもほとんど需要がない。 腐葉土もバーク肥料(樹木の皮を発酵させて作った堆肥)も、落葉広葉樹のものがより良質とされている。クヌギやナラなど、切り倒しても切り株からひこばえが出てきて再生するような、薪や炭によく使われていた樹種だ。近所のお年寄りたちによれば、50年ほど前から薪や炭が使われなくなり、このへんの雑木林は樹齢50年以上のシイやカシ(このあたりの里山の主要樹種で薪炭によく使われていた)でうっそうとしてしまったそうだ。「若いうちなら切っても再生力が旺盛だけど、50年にもなるとよくないねぇ」と言っていた。 また、農村とはいっても非農家もあるわけで、たとえば我が家のまわりはだいたいそうだ。処理の場所も使い道もないから、生ゴミも庭木の剪定したのも、むしった草も、「燃えるゴミ」として出している。鴨川市は「燃えるゴミ」の処理は有料なので、互いの庭が接しているお隣さんにはいつも、「かさばるしお金もったいないし、草はうちの庭のとこに積んでおいて下さいね。生ゴミコンポストに混ぜて堆肥にしますから」と声をかけている。というか、「ゴミ」として重油をかけて燃やしてしまうのが、もったいない。 都会でも庭木や街路樹、公園など、けっこう樹木由来の「ゴミ」は出ているはずだ。自治体によっては資源収集〜堆肥化のシステムを持つ所もあるけれど。 資源はそこに山ほどあっても活用されず、里山は荒れてヤブとなり、けれどモノは必要なので、より安い外国産を輸入する。化学肥料にしても、原料の鉱物資源に乏しい日本は、そのほとんどを輸入。ふつう食料自給率はカロリーベースで計算して、輸入飼料で生産した畜産物を自給に含めないけれど、もし肥料も同じように捉えるならば、日本の食料自給率はほぼゼロになってしまうんじゃないだろうか。 1999年に成立した「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」によって家畜の糞の野積みが禁止になり、一定規模以上の酪農・畜産農家は大きなお金をかけて堆肥化設備を整えることになった。けれど需給がアンバランスすぎて、そのできた堆肥の行き場がない。このへんでは酪農がまだまだ残っているけれど、「けっきょく、できた堆肥を山の中に積んで捨てているところも多いよ」という話をよく耳にする。 霜降り肉や高乳脂肪乳は市場で価値が高いし、飼料は安くて栄養価が高い輸入牧草・輸入穀物に頼ることになる。で、出た糞は使い道があまりない。田畑には肥料が必要だから外国から化学肥料を輸入する。そして草を利用されない里山はヤブとなり....。 なにかが間違っている気がする....。 「(ワタシにとっての)安心安全としての有機、エコ」だけでは見えないものがたくさんあるよねえ。農や食の問題の背景には、複雑で深〜い問題がいっぱい詰まっている。「そういうの、全然見えてなかったな...」と、非農家出身で東京にも長く暮らした者として、自省の思いを込めて振り返るのだ。過疎地に原発が林立するに到った現実も、こういう「見えてない」ところと根っこがつながっている。 今回の原発事故で日本の有機農業が(だけでなく農業そのものが)ガタガタになってしまうとしたら、こんなに腹立たしいことはないではないか。自分なりにでも、農村や農の現場のことをもっと知ってもらう努力をしていきたいと思う。 ○関連記事: 飯舘村から思いをつなぐ ○おすすめのブログ: 大地を守る会のエビちゃん日記 "安心はしんどい" 生産者と消費者を直接つなぐ有機農産物流通の草分け「大地を守る会」のスタッフの人のブログ。「安心はしんどい」という言葉にいろいろと含むものがあるよなあ〜といつも思って読んでいる。原発事故後は、長年関係を築いて来た北関東〜東北の生産者と共に苦悩しながら道を模索するようすが綴られていて、ぜひ読んでみてほしいです。
by hyakuishou
| 2011-07-31 15:53
| 農・食・環境
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